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天体望遠鏡が拓いてきた世界に触れる

2021年5月16に開催した「自作望遠鏡で見る星空観察の集い」は、「天体望遠鏡って何だろう?」という素朴で熱い疑問を共有するものになりました。

アルキメデスからガリレオを経てニュートン、ハーシェルに至る、天体望遠鏡の開発が人類の世界観を切り開いてきた道のり。
そして日本でも、開催地つくば市小田が幕末に輩出した学者、長島尉信(やすのぶ)が後世に遺した、クロイツ群大彗星の詳細な観測記録。
「まだ知らない世界を、もっと知りたい!」という、歴史を紡いだ人たちとこの日集った人たちとの同じ想いが、旧小田小学校の教室に満たされていきました。

幕末のつくばの学者 長島尉信が遺した大彗星の記録

1843年大彗星と太陽系
長島尉信が大彗星を見た時に、太陽系で起きていたこと

全員の自己紹介のあと、長島尉信と彼が遺した天体観測記録「天象図」を紹介しました。

そこには天正14年2月7日(現在の暦で1843年3月7日)の夕暮れに始まる、太陽に近い位置から夜空の半分近い尾をなびかせた彗星の運行が、中国星図と共に記されていました。
まさにその時、太陽に極めて近い軌道をたどる大彗星が太陽付近を訪れていたのです。
後にハインリヒ・クロイツが複数の彗星の軌道の類似性から、過去に太陽の重力でバラバラになった巨大彗星の破片であることを示し、以来「クロイツ群」と呼ばれているものの一つでした。

クロイツ群の彗星は、池谷・関彗星やラグジョイ彗星などその後も何度も出現しています。
しかしこの時は木星ほどの明るさになり、まちの話題も彗星で持ち切りだったようです。
そうしたやりとりの様子も、尉信は暖かい眼差しで記録していました。
藩に仕える学者でありながらも、その人物は気さくで親しみやすい「物知りなおじさん」だったのだろうと思います。
西洋科学が本格的に導入される前の日本のこの地に、豊かな在来の天文の文化が花開いていたことを感じさせてくれました。

遠くのものが大きく見えるわけ

どうして望遠鏡は大きく見えるの
何度も触ったことのあるルーペが、いつもと違う世界を映している

「みんな、ルーペって知ってるよね。」
「じゃあ、ここにきてルーペで外の景色を映してみよう。」
かざしたスクリーンには、逆さまになった景色がハッキリと映し出されていました。
「えー、本当だあー!」
望遠鏡はそうやって逆さまになったものを、大きくして見ているんです。

自分の手で作った「望遠鏡」を、何度も何度もかざして確かめてみる子供たち。
景色が大きく逆さまに見えるのには、ちゃんとわけがありました。

ガリレオの時代、望遠鏡の原理はもう発明されていたらしいです。
でもガリレオはその原理を聞いただけで、自分で望遠鏡を作っちゃった。
そして望遠鏡をそれまでの敵の軍隊じゃなくて、夜空に向けたことが彼の凄いところ。
こうして月のクレータや木星の衛星が発見され、地動説が提唱されたのです。

ガリレオのように、望遠鏡を自分で作る

天体望遠鏡が拓いた世界
本格的なものづくりに挑むとき、大人の表情に変わる

今回の集いで、わたしたちはできる限り参加者に自分で作る体験をしていただく挑戦をしました。
何でもない塩ビパイプや、ただの木材が望遠鏡になっていく様子を感じてほしかったからです。
だから材料の切断や塗装からはじめることに。

もしかしたら、ちょっと難しかったかな…。
わたしたちの不安をよそに、子どもたちははじめての作業に果敢に取り組みました。
穴をあける位置を測る、金属に穴をあける、そこにタップを入れてねじの溝を切る、きれいにバリを取る…。
作業をひとつずつ積み重ね、少しずつカタチができていきます。
買えば何でもそろう時代に敢えて自分で作るプロセスは、人類が受け継いできた”ものづくり”を、自分の手に取り戻していくことかもしれません。

そして最後には全員が、鏡筒と雲台とファインダを一式完成させました。
三脚に取り付けて慎重にピントを合わせると、校庭の向こう側の木立が浮かび上がってきます。
何度も自分で試して操作の感覚をおぼえていきました。

作業が少し多かったけど、今回の望遠鏡はピント合わせの時の視界が安定しているので、初心者でも楽に見れるはず。
でも夕飯の時間が遅れてお腹すいちゃったね。すみません。

天体望遠鏡が拓いてきた世界

どうして鏡像の星を見るの
望遠鏡の歴史を、天文サポータの自作望遠鏡コレクションで確かめる

「これはガリレオと同じ原理の望遠鏡。凸レンズと凹レンズでできています。この時には逆さまじゃなかったんです。」
天文サポータ手作りの望遠鏡は、覗くと確かに逆さまではないけれど、狭い範囲しか見えません。
星は逆さまでも関係ないから、なるべく広い範囲が見える凸レンズ2枚の天体望遠鏡が主流になっていきました。

それからニュートンがレンズよりも作りやすいミラーを使う方法を発明して、ハーシェルはそれで長さが12mもある望遠鏡をつくりました。
どうしてだと思う?
今回オープニングで天文サポータに手渡された望遠鏡を見た子が、「なんか、ぼやけてる…」と言いました。
そう、凸レンズは赤い光と青い光で曲がりやすさが違うために、像がぼやけるのです。(色収差)
つまり、ちょっとだけ曲げればいい望遠鏡ならぼやけにくいってこと。
ハーシェルはだから、ものすごーく長い望遠鏡を作りたかったのです。
その望遠鏡でハーシェルは、地球や太陽が銀河の一部だってことに気付いた。きっと世界が変わって見えただろうね。
でも見たい星の方向によって、人が鏡筒の位置にまで登ってみてたんだって。

いまでは凸レンズと凹レンズをくっつけた「アクロマートレンズ」でこの色収差を補正しています。
今日作った望遠鏡のレンズはこの「アクロマートレンズ」。
対物セルを分解してよく見てみよう。レンズの端にレンズをくっつけた線があります。
ふちが薄い方が星の方、厚い方が目の方です。

自分で作り自分の知識にしていくことは、大量にあふれるモノや情報に対して人間の主体性を回復させる手段だと考えます。
一人ひとりの心の中にあるフロンティアの開拓は、決して専門家任せにはできないものだと思うのです。

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